長く働いてきて、気がつけば50代。「大きな不満があるわけではないけれど、仕事に心から前向きになれない」「このまま定年まで同じことを続けて良いのか分からない」。そんな思いを抱えている方は少なくありません。
この記事では、50代サラリーマンが「目標がない」「このままで良いのか分からない」と感じたときに、今の会社に在籍しながらできる具体的な見直しや、転職以外も含めた複数の選択肢を整理してお伝えします。無理に大きく動くのではなく、「自分のペースで状況を整えたい」という方に向けた内容です。
なぜ50代サラリーマンは「目標がない・このままでいいのか」と感じやすいのか
まず、「自分だけ調子が悪いのではないか」と考えすぎないことが大切です。50代で気持ちが揺れやすくなる背景には、次のような要因が重なっています。
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仕事が日常になり、新鮮さや達成感を感じにくくなる
長年同じ業界・会社で働いていると、仕事の多くは経験の範囲内で処理できるようになります。その一方で、「新しく身につくもの」や「頑張りが目に見えて評価される場面」が減り、以前ほどの手応えを感じにくくなります。 -
役職や担当の変化で、自分の役割が揺らぎやすい
役職定年や配置転換、組織変更などで、以前とは違うポジションになることもあります。「必要とされる場面」が変わることで、やりがいや責任感の持ち方も変化します。 -
家族や健康など、考えるべきテーマが増える
子どもの独立や親の介護、自分自身の健康面の変化など、仕事以外の要素も大きくなってくる年代です。「仕事中心」だった価値観が揺れ動きやすくなります。 -
社会や技術の変化が速く、将来像が描きにくい
DXやAIなど、仕事の在り方が変わるニュースも多く、「このままで大丈夫だろうか」と不安を感じる場面が増えます。そうした空気も、目標を描きにくくする一因です。
このように、環境の変化が重なれば、目標を見失ったように感じるのはごく自然なことです。まずは自分を責めず、状況を整理するところから始めてみましょう。
会社を辞める前にできる5つの具体的な見直し

「目標がない」という焦りから、いきなり転職サイトを見始める方も少なくありません。ただ、その前に今の職場にいながらできる見直しを行うことで、選択肢や判断材料が増えます。ここでは取り組みやすい5つのステップを紹介します。
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これまでの経験・強み・得意なことを書き出す
担当してきた仕事、任されてきた役割、感謝された出来事、評価された実績などを簡単にリストにしてみましょう。「当たり前」と思っていたことが、改めて見ると立派な強みである場合も多くあります。 -
今の職場で「変えられること・変えられないこと」を分ける
担当業務の調整、プロジェクトへの参加、社内異動の可能性など、社内で動かせる範囲を整理してみます。「会社がこうだから」と一括りにせず、自分が働きかけられる余地を探すイメージです。 -
自分が大切にしたい条件を整理する
年収、勤務時間、休日、やりがい、健康、家族との時間など、譲れない条件と調整できる条件に分けてみましょう。今後の選択を考えるうえでの土台になります。 -
社内の人に相談し、客観的な視点をもらう
信頼できる上司や同僚に、「今後の働き方について悩んでいる」と正直に話してみるのも一つの方法です。自分では気づいていない選択肢や、社内の動き方を教えてもらえる可能性があります。 -
生活全体を見直すために、お金と健康状態を整理する
貯蓄、ローン、教育費、想定される支出、現在の体調・通院状況などを大まかに把握しておくと、「今すぐ大きく動くべきなのか」「段階的に変えていくのか」を判断しやすくなります。
これらのステップを踏むことで、「なんとなく不安」という状態から、「自分は何を大切にしたいのか」「どこまでなら変えても良いのか」が少しずつ見えてきます。
50代の転職を成功させた人のリアル体験談
ここからは、実際に50代でキャリアを見直した方の事例を、よくあるケースをもとにご紹介します。必ずしも転職だけが答えではないことが分かると思います。
事例1:55歳・営業職から地域密着サービスへ転職
大手企業で営業職を続けてきたAさんは、ノルマや数字中心の働き方に疲れを感じていました。自分の経験を書き出してみると、「お客様からの相談にじっくり向き合う場面」が一番やりがいになっていたことに気づきます。そこで、シニア向け生活支援サービスを行う会社へ転職。年収は少し下がりましたが、「今の仕事は、日々の小さな感謝の言葉が励みになっている」と話しています。
事例2:52歳・管理職から社内異動で働き方を変えたBさん
役職定年をきっかけに、「今後どうするか」を考え始めたBさん。すぐに転職するのではなく、社内の他部署への異動を希望しました。事業企画を支えるポジションに移ったことで、人のマネジメントから、数字や計画を支える役割へシフト。責任の重さは変わりつつも、「自分に合った距離感で仕事と向き合えるようになった」と感じているそうです。
事例3:57歳・製造業から副業をきっかけに働き方を見直したCさん
工場勤務を続けていたCさんは、将来への備えとして副業のWebライティングを始めました。最初は数千円ほどの収入でしたが、継続するうちに月数万円の副収入に。定年後を見据えて少し早めに退職し、現在は年金と副業を組み合わせた働き方を選んでいます。大きく稼ぐというより、「無理なく続けられるペースを大切にしている」とのことです。
これらの事例から分かるのは、「転職するかしないか」だけでなく、「どういう働き方なら自分が納得できるか」を軸に考えることが大事だという点です。
50代の転職で注意したい3つの落とし穴
転職を検討する場合、次の3点には特に気をつけたいところです。事前に意識しておくだけでも、後悔のリスクを減らしやすくなります。
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落とし穴1:感情的になって退職を急いでしまう
仕事への違和感が強くなったときほど、「今すぐ辞めたい」という気持ちが強くなりがちです。ただ、退職を先に決めてしまうと、次の選択肢に妥協せざるを得ない場面も出てきます。在職中に情報収集や面談を進め、ある程度のめどをつけてから動く方が、選べる範囲は広くなります。 -
落とし穴2:年収だけを基準に考えてしまう
収入はもちろん大切ですが、50代以降は体力や通勤時間、働くペース、心身の負担も重要な要素です。年収が少し下がっても、残業時間や通勤負担が減ることで、生活全体の満足度が上がるケースも少なくありません。 -
落とし穴3:一人で悩み続けてしまう
誰にも相談せずに判断すると、不安が大きくなりやすく、選択肢も偏りがちです。家族や信頼できる友人、同僚、専門家など、複数の人に話を聞いてもらうことで、考え方の幅が広がります。
転職だけではない4つの選択肢【副業・社内異動・働き方の見直し】
「目標がない」「今のままで良いか分からない」と感じたとき、必ずしも転職だけが答えとは限りません。状況に応じて、次のような選択肢も検討できます。
- 今の会社で社内異動や役割の見直しを相談する
部署や業務が変わるだけでも、仕事への向き合い方が変わることがあります。 - 副業で別の分野に小さく関わってみる
本業を続けながら、新しい分野との接点を持つことで、将来の選択肢が広がります。 - 勤務時間や働き方(時短・嘱託など)を調整する
負担を少し軽くすることで、仕事以外に向き合う時間や余裕が生まれます。 - 定年後の生活も見据え、少しずつ準備を進める
急激に変えるのではなく、数年単位で計画することで、心の負担を小さくできます。
どの選択肢が正解というわけではなく、「自分と家族にとって無理なく続けられる形」を考えることが大切です。
「やりたいことが分からない」50代が今日からできる小さな一歩

「行動した方が良いのは分かるけれど、そもそも何をやりたいのか分からない」という声もよく聞きます。そのようなときは、大きな目標を決めようとするよりも、次のような小さな一歩から始めるのがおすすめです。
- 興味がある・気になっていたことを一つだけ試してみる
スポーツ、趣味の教室、オンライン講座、読書会など、負担の少ないものから始めてみます。 - 同じ年代や近い悩みを持つ人が集まる場に参加する
地域のコミュニティやオンラインコミュニティを通じて、人の話を聞くことも大きなヒントになります。 - 専門家に相談し、客観的な視点を取り入れる
キャリアコンサルタントなど、第三者の視点から整理してもらうと、自分では気づきにくい強みや方向性が見えてくることがあります。
「やりたいこと」を一度で見つける必要はありません。小さな行動を続けていくなかで、少しずつ輪郭がはっきりしていきます。
家族や若い世代のキャリア相談に役立つサービスも知っておく
50代になると、自分自身のこれからだけでなく、子どもや部下など、若い世代のキャリアについて考える場面も増えてきます。そうしたときに、20代・30代向けの転職サービスを知っておくと、相談された際に具体的な選択肢として紹介しやすくなります。
たとえば、20〜30代向けの転職支援サービスである『よりそい転職』は、若い世代のキャリア相談に活用できる選択肢の一つです。自分の経験を踏まえながら、「こういうサービスもある」と情報を伝えられると、相手にとっても心強い存在になれます。
よくある質問 / Q&A
Q. 50代で「目標がない」と感じるのはおかしいことでしょうか?
A. おかしなことではありません。仕事や家庭、健康などの状況が大きく変わる年代なので、これまでの延長線上に目標を見つけにくくなるのは自然なことです。まずは今の状況を整理するところから始めてみてください。
Q. すぐに転職するのは不安ですが、このまま続けるのも迷いがあります。
A. 転職か現状維持かの二択ではなく、社内異動や副業、働き方の調整など、間の選択肢もあります。どの程度の変化なら現実的かを整理したうえで、段階的に動いていく方法も検討してみてください。
Q. 家族に相談すると「今のままで良いのでは」と言われてしまいます。
A. 家族の言葉には、収入や生活の安定を心配する気持ちが含まれていることが多いです。「なぜそう感じているのか」「どのように準備しているのか」を落ち着いて伝えることで、話し合いやすくなる場合があります。
Q. やりたいことが見つからないまま時間だけ過ぎてしまいそうで不安です。
A. 大きな目標を決めようとせず、小さな興味を一つずつ試していく方が、結果として自分に合う選択にたどり着きやすいこともあります。少しでも気になることがあれば、一度だけ試してみるところから始めてみてください。
Q. 副業や新しい勉強に興味はありますが、今さら始めても遅いでしょうか?
A. 遅すぎるということはありません。小さく始めてみることで、自分のペースや向き不向きが分かってきます。本業と両立しながら、無理のない範囲で挑戦してみるのがおすすめです。

