就職して数年経ち、「このままでいいのかな？」と思い始める人もいれば、「もっとやりたいことが見つかった」「職場の雰囲気が合わない」「環境を変えたい」といった理由で転職を繰り返す方もいます。しかし、転職を重ねるたびに「回数が増えている」「周囲の目が気になる」と悩みを抱えてしまうケースも少なくありません。
一方で、昨今の日本の労働市場では、終身雇用制度の揺らぎやIT技術の普及などもあって、20代という若さでの転職は比較的珍しくなくなってきました。むしろ柔軟な働き方を受け入れる企業が増えており、転職回数が多いからといって必ずしもネガティブに捉えられるわけではないのです。
とはいえ、転職回数が増えることで得られるメリットもあれば、「これで本当に大丈夫かな？」という不安もつきまとうもの。今回は、20代で転職回数が増える背景や、実際にどう行動すれば納得感を得られるのかを詳しく解説していきます。前向きなキャリアづくりのヒントを、一緒に見つけていきましょう。
転職回数が増えるのは本当にデメリット？
「転職回数が多いと、人事担当者に悪い印象を持たれそう…」と心配する方が多いですが、実際には転職回数だけで即座に不採用になるとは限りません。確かに、昔ながらの企業では「腰を据えて長く働いてくれる人が良い」という考え方が根強いことも事実です。しかし近年は、IT業界やスタートアップ企業を中心に、人材の流動性を高く評価するケースも増えています。
実際、「いろいろな会社を経験しているからこそ、業務の引き出しが豊富」「新しい環境に適応するスピードが速い」「経験値を早く積むことで、若くしてマネジメントを理解している」といったプラス面を重視する企業も存在します。転職回数そのものよりも、「どういう目的やビジョンがあって転職をしてきたのか」「その経験をどう活かしているのか」が、より大切なポイントとして見られやすくなっているのです。
なぜ20代で転職回数が増加する？
20代で転職回数が増えてしまうのは、いくつかの要因が考えられます。
- キャリア観の変化
昔は、「学校を卒業したら1社に入社し、定年まで働くのが当たり前」という時代もありました。しかし現在では、「自分の好きなことを仕事にしたい」「スキルを活かして成長したい」「やりがいを感じる環境を探したい」など、多様なキャリア観が生まれています。20代のうちはまだ仕事や自分の得意・不得意に気づく途中段階でもあり、結果として複数回の転職をする方が増えているのです。 - マッチングの難しさ
新卒入社の場合、企業とのミスマッチが起こりやすいとも言えます。実際に働いてみて、想像していた業務と違う、社風が合わない、残業が多すぎるなどの理由から「ここでは長く続けられないかも」と早期退職に踏み切る人も。こうしたミスマッチが20代で重なると、転職回数が自然と増えていきます。 - 好景気・人手不足の影響
一部の業界では人材不足が深刻化しており、未経験者歓迎の求人や第二新卒者向けの採用が活発です。そのため、今より条件の良い求人に出会う機会が多く、「新しいチャレンジをしてみよう」と思い立ちやすい背景があります。結果として、短いスパンで転職を経験する20代が増えているとも考えられます。
転職市場の活況と新しいキャリア観、そして企業とのマッチング問題が、20代での転職回数を増加させる大きな要因と言えるでしょう。
どんな悩みが生まれるの？
転職回数が増加することで、どんな悩みが生じるのでしょうか。具体的に挙げてみます。
- 次の転職先で不利になるのでは？
「また辞めるのではないか」と疑われたり、「忍耐力がない」「人間関係が苦手かも」といったイメージを持たれそうで不安になるケースがあります。特に面接の際に「どうしてこんなに短期間で転職しているの？」と聞かれると、ドキッとしますよね。 - 職歴が安定しないことへの焦り
周囲を見渡すと、同じ会社でキャリアを積んでいる同年代の友人もいます。「自分はどこに向かっているんだろう？」という焦燥感や、「これ以上転職回数が増えると、いつか後戻りできなくなるのでは」というプレッシャーがかかりやすくなります。 - 自分の本当にやりたいことが分からない
キャリアチェンジを目的として転職を重ねる一方で、いざ新しい仕事に就いても「やっぱり違うかも」と感じてしまうことがあります。試行錯誤を繰り返すうちに、「そもそも何がしたいのか分からなくなった」という悩みに陥ることも。
こうした悩みを解決しながら、自分が納得できる道を見つけるためには、いくつかのポイントを意識すると良いでしょう。
悩みを前向きに変えるには？
悩みを解消するには、まず「転職回数が増えた背景」を整理してみることが大切です。決して “ただなんとなく” 転職をしていたわけではないはずで、そこには何らかの理由や目的があったはず。自分自身を客観的に振り返ることで、以下のようなメリットや学びを再確認できます。
- 柔軟にキャリアを切り拓く力
環境を変えるたびに、新しい組織構造や人間関係、業務フローに順応してきたのは事実です。これは大きなアピールポイントにもなり得ます。変化への適応力やコミュニケーション力などは、1つの会社だけに留まっていた人にはない強みかもしれません。 - 自分に合わないものを早めに排除できる
ミスマッチに気づいたら、すぐに切り替えてきたからこそ、「自分が苦手とする環境」や「避けたい業務内容」が明確になっている場合も多いです。これは次の企業選びにおいて、重要な判断材料になります。 - 目的志向で転職を語れる
面接で転職理由を聞かれたとき、「やりたいことに近づくための行動でした」と伝えられるよう準備をしておくと、転職回数の多さを逆手に取り、ポジティブな印象につなげることができます。
このように、「転職回数が増えた＝自分がダメ」という思考に陥るのではなく、「どういう意図や学びがあったか」を明確に言葉にしていくと、不安も軽減しやすくなります。
面接で何を語ればいい？
転職活動を再スタートする際、気になるのは「面接での自己アピール方法」ですよね。特に20代で転職回数が複数回にわたる場合は、質問される確率が高い部分です。
1. 転職理由を一貫性のあるストーリーにする
たとえ異業種・異職種であっても、「自分が求めるやりがい」「スキルを活かしたい分野」「これまでの経験で学んだこと」が一本筋の通ったストーリーになっていれば、説得力が増します。
2. ネガティブな言葉を使わない
前職の不満や失敗だけを強調するのは避けましょう。「人間関係が悪かった」「残業が多すぎて嫌だった」など、相手からするとマイナスイメージにつながる可能性があります。代わりに、「環境を変えて新しい挑戦をしたかった」「自分の強みをもっと活かせる場を探していた」とポジティブな表現に切り替える意識を持ちましょう。
3. 実績や具体的なエピソードを交える
会社に貢献した事例や、業務をどう工夫して成果を上げたかなど、数字や具体例があると信頼性が高まります。「複数の会社で学んだ視点を活かして、新しい組織でも柔軟に行動できます」という形で、自分の強みを示すことがポイントです。
これから転職を考えるなら？
「転職回数が増えてしまったけど、また新しいステージに挑戦したい」と考えている20代の方は、次のポイントを意識しながら準備を進めてみましょう。
- 自己分析を徹底する
過去の職歴における成功体験や失敗経験を振り返り、「自分が本当にやりたい仕事は何か」「どんな環境が自分に合うか」を明確にしておくと、これ以上ミスマッチを重ねるリスクを減らせます。 - 情報収集を怠らない
インターネット上での口コミや、SNS、転職サイトを活用して企業研究を行いましょう。最近では、リモートワークOKの企業も多く、ワークライフバランスを重視した働き方も選択肢に含まれます。自分に合うと思える会社が想像以上にたくさん存在するかもしれません。 - 転職エージェントを活用する
プロのキャリアアドバイザーに相談すると、客観的な意見を得られるだけでなく、非公開求人の情報も手に入る可能性があります。20代向けのエージェントも多く、転職回数が多い方に合ったアドバイスやサポートをしてくれるところを探すのも有効です。
- 長期的な視野で考える
転職回数が増えること自体を“ゴール”と捉えるのではなく、「数年後、どんな姿でありたいか」をイメージしながら動くと、キャリアの方向性が定まりやすくなります。自分の成長に直結する企業やポジションを探すことで、将来的に転職回数を増やしすぎない工夫にもつながります。
まとめ
20代での転職回数増加に関する悩みは、一見するとネガティブに感じられるかもしれません。しかし、現代の労働市場では「転職＝マイナス」という考え方は徐々に薄れ始めています。むしろ、自分に合った仕事や職場を探し、早いうちに方向転換できるのは20代の特権とも言えるでしょう。
もちろん、転職回数が増えることで生まれる不安や懸念は無視できませんが、これまでの転職経験を通じて得た強みや学びをしっかりと言語化すれば、次の就職先で評価される要素にもなります。面接では一貫したキャリアストーリーを語り、ポジティブな姿勢を見せることで、企業側も「この人なら活躍してくれそうだ」という期待を抱きやすくなるはずです。
大切なのは、転職を繰り返すたびに自分を見失わないよう、自己分析とリサーチを丁寧に行うこと。やみくもに転職をするのではなく、常に「自分はどんなキャリアを築きたいのか？」「どんな仕事環境なら力を発揮できそうか？」という軸を大切にすると、納得感のある一歩を踏み出しやすくなります。20代だからこそ実現できる柔軟なキャリア構築を、前向きに楽しんでいきましょう。
よくある質問/Q&A
Q1. 20代で転職回数が3回以上だと不利になりますか？
A. 一般的には転職回数が多いほど、面接で詳細を聞かれる機会は増えますが、不利と決めつけることはできません。転職の経緯や理由、そこで得た学びをしっかりアピールすれば「柔軟にキャリアを積んできた」というプラス評価につなげることも可能です。
Q2. 面接で「転職が多い」と指摘されたら、どう答えればいいでしょうか？
A. ネガティブにならず、「その経験を通じて何を得たか」「どう成長したか」を具体的に伝えることが重要です。自分の軸が定まってきた過程として説明できるよう準備しておくと良いでしょう。
Q3. まだやりたいことがはっきりせず、また転職を考えています。迷いがある状態で動いてもいいのでしょうか？
A. 迷いがある状態でも、情報収集やキャリア相談をするだけでも前進です。転職エージェントや知り合いに相談してみることで、「本当に今転職すべきか」「やりたいことを見つけるためにできることは？」など、頭の整理につながる場合があります。
Q4. 転職回数が増えたら、履歴書の書き方にコツはありますか？
A. 職歴欄が長くなるほど、志望動機の欄や自己PR欄でストーリーをしっかり補完するのがポイントです。短期間で退職した理由をすべて詳細に書く必要はありませんが、募集要項に合致する経験や成果を強調してまとめると好印象になります。
Q5. 転職を繰り返して給料が下がるのが怖いです。どうしたらいいですか？
A. 転職する際は、企業の給与テーブルや昇給制度、福利厚生などをしっかり確認しましょう。エージェントを活用すると、条件面の交渉をサポートしてもらえることもあります。また、一時的に年収が下がっても、将来的なキャリアアップで大きく伸ばせる可能性もあるため、総合的に判断してみてください。
