中間管理職として仕事を進める中で、「部下との上手な接し方」に悩んでしまうことはありませんか?上層部からの要求を叶えつつ、現場のモチベーションを維持・向上させるのは、とても繊細なバランスが求められます。さらにコロナ禍以降、オンライン会議やリモートワークが当たり前になり、これまで以上に部下との意思疎通が難しく感じられることも増えたかもしれません。そんなときこそ、中間管理職としての自分の役割を見直しながら、具体的なコミュニケーションの取り方を学びたいものです。
本記事では、部下との上手な接し方について実際に役立つマネジメント術をご紹介していきます。部下のやる気を引き出し、一緒に働く仲間として信頼関係を築くためのヒントが満載ですので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
部下との接し方を見直すべきタイミングって?
中間管理職として日々働いていると、「人を動かすこと」にエネルギーを注ぐ場面が増えてきます。プロジェクトの進行管理、上層部への報告、さらにチームメンバーの育成など、「いくら時間があっても足りない!」と感じる方も多いでしょう。こうした多忙な中で、ふと「あれ? 最近、部下との距離が広がっていないかな」と気づく瞬間はありませんか?
部下の意欲が下がったように思える、あるいはちょっとした不満がチーム全体に漂っている…。そんなときこそ、接し方やコミュニケーションを見直す絶好のタイミングです。原因不明のモヤモヤを放置してしまうと、後から大きなトラブルにつながることもあります。ここでは、どんなサインが出てきたら「接し方を要チェック!」と判断できるのでしょうか。
例えば、「部下からの報連相が激減した」「ミーティングで意見がまったく出なくなった」「雑談が減って実務だけの関係になっている」といった変化が一つの指標になります。こうしたサインを見逃さずに、早めに接し方を見直すことが大切なのです。
上司と部下の溝はなぜ生まれる?
「部下との上手な接し方」を考えるうえで欠かせないのが、そもそも上司と部下の溝はなぜ生まれるのか、という点です。まずはその背景を理解しないまま、形だけのコミュニケーション手法を取り入れても、根本的な解決にはつながりません。上司・部下間のすれ違いを生む主な要因を大まかに見てみましょう。
1. 目標やビジョンの共有不足
上層部から与えられる目標をただ部下に伝えるだけで、「なぜそれが必要なのか」「達成するとどんなメリットがあるのか」といった背景説明が不足しているケースは多いです。部下にとっては「何のために、誰のために頑張るのかわからない」状態になるため、モチベーションを保ちづらくなってしまいます。
2. 評価やフィードバックの不透明さ
評価制度の仕組みや、個々の実績に対する具体的なフィードバックがないまま進むと、部下は「自分は正当に評価されているのだろうか」と不安を感じがちです。特にオンライン化が進む職場では、上司と直接話す機会が減っているため、誤解が生じやすくなっています。
3. お互いの感情や価値観のズレ
上司・部下ともに忙しい環境にいると、「自分の常識=相手の常識」という思い込みをしがちです。しかし、部下によって価値観やワークスタイル、プライベートの状況はさまざまです。そこを配慮せずにコミュニケーションを取ると、「分かってもらえない」「理解されていない」という気持ちが溜まりやすいかもしれません。
コミュニケーションを改善するコツは?
多忙な中間管理職でも取り入れやすい、コミュニケーション改善のヒントをいくつかご紹介します。オフィス勤務、リモート勤務など働き方が多様化する中でも、実践しやすい方法をまとめました。
1. 定期的な1on1ミーティングを設ける
近年、多くの企業で取り入れられているのが1on1ミーティングです。週に1回、あるいは隔週など、短い時間でも定期的に部下と向き合う時間を確保してみましょう。業務の進捗だけでなく、「今、どんなことにやりがいを感じているか」「困っていることや不安はないか」など、個人的な感情面まで話題にのぼせるのがポイントです。対面で難しい場合はオンラインでも構いませんが、可能であればカメラをオンにしてお互いの表情を見られる環境にすると良いですね。
2. タスクをただ振るのではなく、成果物イメージを共有する
部下に仕事を任せる際は、完成イメージや求めるクオリティをきちんと共有してから振ることが大切です。「この作業は何のために行うのか」「どの部分が特に重要なのか」を事前に説明することで、部下は「どう動けば成果に直結するか」をイメージしながら進められます。単に「これやっといて」で終わるのと比べ、モチベーションが大きく変わるはずです。
3. ネガティブなフィードバックこそ丁寧に
部下の仕事で修正点や改善点があった場合、つい忙しさから雑に指摘してしまうことはありませんか?特にメールやチャットで簡潔に済ませようとすると、どうしてもキツい印象になりがちです。ネガティブな内容ほど対面で、あるいはオンラインでも音声通話などで直接伝えるほうが誤解を防ぎやすくなります。相手が納得感を持てるように「なぜそれが問題なのか」「どのように改善すれば良いのか」をセットで伝えてあげましょう。
部下との信頼関係を築くためのポイントは?
コミュニケーションが円滑に進むかどうかは、部下との信頼関係に大きく左右されます。とはいえ、「どうすれば信頼してもらえるのかわからない」という声もよく耳にしますよね。ここでは、比較的取り入れやすく、かつ効果の高いポイントをまとめました。
1. 公平性を意識する
部下が複数いる場合、それぞれ性格や仕事の進め方が異なるため、どうしても相性の良し悪しが出てきてしまいます。しかし、リーダーが露骨に「この部下だけをひいきする」といった態度をとると、他のメンバーは不信感を抱いてしまいます。評価や接し方はもちろん、ちょっとした会話や任せる業務配分などでも公平性を保つ意識を持つと、メンバー全体のモチベーションが安定しやすくなります。
2. 上司としての責任を果たす
部下がミスを犯したときに「なぜお前はこんなミスをしたんだ!」と責めるだけで終わるのではなく、自分のマネジメントに何か至らない点はなかったか振り返る姿勢が大事です。場合によっては上層部に対して部下を擁護したり、改善策を一緒に練ったりすることで、部下に「この上司は自分をサポートしてくれる」と感じてもらえます。信頼関係は、上司が弱い立場の人を守る行動を示すことで築かれる場面も多いのです。
3. 部下の成長を喜ぶ
部下に対して厳しく指導するばかりではなく、「できるようになったこと」を素直に喜ぶ姿勢を忘れないようにしましょう。特に、新しいスキルを習得したり、難しい業務を一人でやり遂げたりしたときには、しっかりと労いの言葉をかけることが大切です。「あなたの成長を本気でサポートしたい」という気持ちが伝われば、部下も前向きに行動しやすくなります。
オンライン下での接し方はどう変わる?
近年はリモートワークの導入率が上昇しており、ハイブリッドワーク(出社とリモートの併用)が一般的になってきています。そうした状況で、「部下とのコミュニケーションが取りづらい」「上司の思いが伝わりにくい」と感じることはありませんか?オンライン下での接し方には、オフィス勤務にはなかった独特のコツがあります。
1. カジュアルなやり取りの場を設ける
オンライン会議はどうしても議題やアジェンダに沿った堅い話が中心になりがちです。そこで、雑談専用のチャットや定期的なオンラインランチ会など、業務とは直接関係のないコミュニケーションの場を用意することが有効です。人間関係は仕事の話だけでなく、趣味やプライベートの話などを交えながら深まることが多いもの。オフィスでの何気ない雑談タイムが失われた分、意図的に作り出すことを心がけましょう。
2. 目標設定と進捗管理を可視化する
リモート下では「上司の目が届かないから、部下の仕事ぶりが分からない」と感じる人もいるかもしれません。一方、部下からすると「評価される基準が曖昧」と不安が高まることも。そこで有効なのが、タスク管理ツールやプロジェクト管理ツールを活用して、誰が何を、いつまでに取り組んでいるのかをチーム全員が把握できるようにする方法です。お互いに可視化された情報があれば、指示・報告がスムーズになり、過度な監視感も回避できます。
3. リアクションとフィードバックを意識的に増やす
対面と比べてオンラインでは表情や声のトーンが伝わりづらいため、部下は「ちゃんと聞いてもらえているのかな?」と不安を抱えやすくなります。そこで、オンライン会議中は「なるほど、それはいいアイデアですね」「そういう考え方も面白いですね」など、合いの手やリアクションをこまめに入れる工夫をしてみましょう。また、チャットで褒めたり励ましたりすることも効果的です。少し大げさなくらいのポジティブなフィードバックが、部下のモチベーションを底上げしてくれます。
キャリアパスの相談にはどう対応する?
中間管理職の重要な役割の一つに、部下のキャリア形成をサポートすることが挙げられます。特に若手社員は「この会社で成長できるのか」「数年後の自分はどうなっているのか」と不安を抱えていることも多いもの。そこで、キャリアパスやスキルアップに関する相談にどう対応すれば良いのか、ポイントをまとめました。
1. 本人の希望や強みを引き出す
「この部署で経験を積んだ先に、あなたはどんな働き方をしたいの?」など、部下の将来像を具体的に引き出す質問を投げかけましょう。部下がまだ明確なビジョンを持っていない場合でも、「今までの得意分野は何か」「仕事をしていて楽しい瞬間はどんなときか」などをヒアリングしていくと、自分の強みや志向性に気づくきっかけを提供できます。
2. 具体的なスキルアップの道筋を提案する
キャリアパスの話だけで終わらせず、そこに向けてどんなスキルや経験を積めばいいのかを一緒に考えてみましょう。例えば、「プロジェクト管理の経験を積みたいのなら、次回のプロジェクトでサブリーダーとして参加してみない?」といった具体案を出すことで、部下は将来に向けたステップを踏みやすくなります。
3. 定期的にフォローする
一度相談に乗って終わりではなく、その後の進捗や考えの変化を追いかけることも欠かせません。部下が途中で悩んだり、挫折しそうになったりしたときには、早めにサポートできる体制を整えておくことが理想です。
まとめ
「部下との上手な接し方」を考える際、大切なのは相手に合わせた柔軟なコミュニケーションを心がけることです。忙しさのあまり一方通行の指示や批判だけをしてしまうと、どうしても部下との距離が生まれてしまいます。逆に、短い時間でも1on1を設けたり、オンラインでも雑談の機会を意図的につくったりするなど、小さな工夫を積み重ねるだけで、チームの雰囲気が驚くほど変わることもあるのです。
また、公平性の意識やネガティブなフィードバックこそ丁寧に行う姿勢、そして部下のキャリア形成をサポートする具体的なアクションなど、中間管理職としてできることはたくさんあります。自分一人で抱え込まず、ときには周囲のアドバイスを取り入れながら、部下との信頼関係を育んでいきましょう。それが結果的に、あなた自身のマネジメントスキルを高め、チーム全体の成果を底上げする大きな力となるはずです。
よくある質問/Q&A
Q1:部下とあまり話す機会がなく、顔も合わせないまま業務が進んでしまうのですが、どう対処すればいいですか?
A1:オンライン会議やチャットツールだけに頼ると、コミュニケーションが必要最低限になりがちです。そこで、週に一度でもかまいませんから、雑談を含めた1on1の時間を設定してみるのがおすすめです。仕事の話だけではなく、近況やちょっとした趣味の話題を交えて交流することで、部下の心情やモチベーションが掴みやすくなります。
Q2:部下から「評価が不透明」と言われたときはどうすればいいでしょうか?
A2:具体的な評価基準をわかりやすく伝える努力が必要です。たとえば、どのようなスキルや行動を重視しているのか、数字や事例を交えて説明すると説得力が増します。また、成果だけでなくプロセスを評価するポイントなどを具体的に示すことで、部下は「自分が努力すべき方向性」が見えやすくなります。
Q3:フィードバックをする際、厳しいことを言っても大丈夫でしょうか?
A3:厳しい内容でも、伝え方を工夫すれば前向きに受け取ってもらいやすくなります。事実と期待をセットで伝えることがポイントです。たとえば、「この部分は改善が必要だと思う。でも、あなたにはこういう強みがあるから、こうすればもっと良くなると思う」といった形で、課題と期待・励ましを同時に伝えてあげると効果的です。
Q4:リモートワーク中に部下がサボっていないか心配です。どう監督すればいいのでしょうか?
A4:監視しすぎると部下のモチベーションが下がったり、ストレスにつながる恐れがあります。まずはタスクや目標の設定を明確にし、プロセスと成果を定期的に確認する仕組みを作ってみてください。オンラインツールでタスクを可視化したり、進捗を共有する仕組みを整えれば、過度な監視をしなくても十分に管理が可能です。
Q5:部下のキャリア相談を受けたとき、どこまで踏み込んでアドバイスするべきでしょうか?
A5:あくまで最終決定は部下本人が下すものなので、「具体案を複数示す」「本人の希望や強みを一緒に確認する」程度に留めると良いでしょう。中間管理職としては、会社の方針や組織の状況を踏まえたうえで、可能性を広げるためのオプションを提示し、必要なスキルや経験を取得できる環境を整えるサポートが理想的です。
